モテKingのターゲット
「おはようございまーす」
厨房に入った俺に父親が不思議そうに覗き込んで来た。
早朝以外で店舗スペースに入ったのは何年振りだろうか?
中2以来………な気がする。
パートのおばさん達も不思議そうに見つめて来る中。
「親父、何すればいいの?」
「あっ?あぁそうだな、そこのパイ生地を仕上げてくれ」
「了解」
俺は無心に手を動かし始めた。
俺がいない間に、この聖域を荒らされて堪るか!
ここの主は親父と俺と、リュウさん(親父の愛弟子)だけだ。
女がどうして『パン職人』になりたいかなんてどうでもいい。
なりたいなら、他の店でやってくれってのッ!!
ここだけは、ぜってぇ譲れねぇ。
「リュウさんっ!他にする事はありますかッ?!」
「おい、気合が入ってんな」
「何でもいいんで、指示出して下さいっ!!」
「おぅ、んじゃあ、カレーパン頼む」
「了解!」
俺は番重に準備されてるカレーパンを1つ1つ丁寧に揚げ始めた。