モテKingのターゲット
11時を過ぎた頃から店は混雑して来て、
イートインコーナーも待ち時間が出るほど。
翔はもっぱらレジとイートインコーナーの接客に追われている。
翔目当ての女の子も多い中、誰に似たのか、愛想よく振る舞っている。
焼いても焼いても追いつかない。
夏場の厨房はまさに地獄。
オーブン前で作業してると熱中症になりそうだ。
12時半を過ぎると、ほんの少しだけ客の波が止まった。
それを見極めた親父が口を開く。
「周っ、少し休憩して来い!」
「いや、まだ大丈夫!!」
「そうか?んじゃあ、リュウ、先に行って来い」
親父の言葉でリュウさんと視線が絡む。
俺は小さく頷くと、フッと口元を緩めたリュウさん。
「じゃあ、お先に」
「いってらっしゃーい」
笑顔でリュウさんを見送ると、入れ替わるようにアイツが姿を現した。
「おはようございまっ………す」
厨房に入ったアイツは、俺を見て固まった。
そんなアイツに俺は真顔で。
「どけ、邪魔だ」