モテKingのターゲット


俺の嫌悪感に圧倒されたのか、その後、蘭は黙り込んでしまった。


無言で歩く俺ら。

会話もなければ、視線を合わせる事もせず、黙々と歩く。


駅のホームで電車を待つ間も、蘭は口を開く事は無かった。


そんな彼女の隣りにいると、野郎どもの視線が彼女に向けられている事に気付く。

ノーメイクでも十分際立ってる顔立ちだ。

それに、夏だから仕方ないのかもしれないけど、それにしたって危機感ってものが皆無のようだ。


黒いキャミソールのミニワンピースは、体のラインがくっきり浮かび上がり、野郎どもの視線を無意味に集めている。


「お前、脳ミソあんのか?」


耐え兼ねた俺は、無意識に口走っていた。


「はっ?……それ、どういう意味ですか?」


ムッとした表情で見上げて来た。

俺の言ってる意味が通じないようだ。


俺は白いTシャツの上に黒いベストを羽織っている。

そのベストを脱いで、彼女の肩にそっと掛けた。


「痴漢を撃退出来ねぇのに、エサ蒔いてどうすんだよ」

「ッ!!」


俺の行動に漸く女の子らしい表情をした。


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