モテKingのターゲット
再び黙り込んでしまった彼女。
到着した電車にも無言で乗り込んだ。
そんな彼女を時折横目で見ながら、様子を窺う。
その表情は言葉では言い表せないような複雑な色を滲ませていた。
結局、電車を降りたのは『CLUB 泉』がある駅。
彼女は先日と同じように躊躇う事無く歩き出す。
年頃の女の子が、夜の繁華街を1人で歩く事がどれほど危険か、コイツは解らないようだ。
やっぱり、脳ミソが足りないらしい。
「なぁ」
「……はい?」
「いつも、こんな風に1人で歩いて怖くねぇの?」
「はい、別に何とも思いませんが?」
「お前、変ってる」
「周さんには言われたくありません」
“周さん”
コイツは俺の事をシュウではなく、『あまねさん』と呼ぶ。
まぁ、両親が『あまね』と呼び捨てにしてるし、パートさん達も『あまねくん』と呼ぶから、教えてなくても知ってたんだろうけど。
身内以外で『あまね』と呼ばれたのは、学校の先生以来だ。