モテKingのターゲット
会話らしい会話も無く、気付けば『CLUB 泉』の店先に到着した。
「あの……」
「あ?」
「お腹、空きません?」
「は?」
「夕食、食べる時間も無かったですよね?」
「………当たり前だろ」
蘭の言葉に苦笑すると、不意に俺の腕を掴んで来た。
「お詫びというか、お礼というか……。とにかく、ご飯を食べて行って下さい」
「はっ?」
蘭は俺の腕を無理やり引き寄せ、店の中へと連れ込んだ。
「いらっしゃ「志垣さん、彼はお客さんでは無く、私の知り合いなので」
志垣という名の男。
先日見た、ワイルドな中年の男だ。
やはり黒服のようで、営業スマイルで出迎えられた。
「彼氏か?」
「違います!もう、変な事言わないでよっ!」
志垣という男が見つめる中、蘭は俺の腕を掴んだまま、店の奥へと歩いて行く。
「おいっ、どこ行くんだよ」
「いいから、黙ってついて来て」
女遊びは慣れてても、こういう所は初めてなんだけどな、俺。
興味本位でキョロキョロしながら、蘭の後を追うと。