モテKingのターゲット
「控室……じゃなくて、休憩室の方がいいわね。女の子達が騒ぎそうだし」
「……そうね。じゃあ、奥にいるね」
「志垣に持って行かせるわ」
蘭の母親が軽く手を振る中、俺らは店の奥に足を進めた。
事務所らしき部屋の奥に1段高く盛られた場所がある。
煌びやかな店内とは違い、そこは青畳が敷かれている。
「適当に座ってて下さい」
「お前は?」
「食事が来るまでの間、ちょっとだけ事務所の仕事をします」
「あっそ」
俺は靴を脱いで畳の上に胡坐を掻いた。
すると、蘭は帳簿らしきファイルを広げ、何やら書き込み始めた。
「事務所の仕事って?」
「………そうですね。出納帳を付けたり、シフト表を作成したり、在庫管理をして発注を掛けたり。とにかく、何でも出来る事はします」
「…………へぇ」
俺は正直かなり驚いた。
『CLUB 泉』という看板に騙されていたのかもしれない。