モテKingのターゲット
「なぁ、店には出るのか?」
「フロアにって事ですか?」
「あぁ」
「無いです。お酒も飲めませんし、未成年の子をフロアに立たせるような事は、母のモットーに反しますから」
「………へぇ」
俺が抱いていたクラブのママのイメージと蘭の母親は少し違うようだ。
さっきの物腰柔らかい表情もそうだが、水商売の印象がかなり薄れている気がする。
「その仕事して、給料貰ってんの?」
「貰うわけ無いじゃないですか。私は従業員じゃ無いもの」
「じゃあ、何でしてんの?」
「多分、周さんと同じだと思いますけど」
「俺と?」
俺は親の背中を見て育った。
夫婦仲はいいが、旅行にも出掛けた事が無く、いつも寝る時間を作るのが大変そうだった。
だから、少しでも休ませてあげたくて。
子供心に自然と手伝うようになっていた。
勿論、お小遣いも欲しい。
だけど、小遣いとは別で欲しい物は結構なんでも買ってくれた気がする。
もしかすると、母子家庭という事で、俺よりも金銭的には大変だったに違いない。
それに夜働いている母の事を案じて、自然と手伝うようになっていたって事か。