モテKingのターゲット
「なぁ、何でいきなり俺をここに連れて来ようとしたんだ?」
「それは………」
俺の問い掛けに言い淀んだ蘭。
手にしていたボールペンを机に置き、俺の方へ顔を向けた。
「周さんの本当の姿を見た気がして………何故かは分からないけど、誤解されたままなのはちょっと嫌だったっていうか。多分、誤解されたままだと、またおかしな事を言われるんじゃないかと思っただけで……」
蘭は俺の顔色を窺いながら言葉を選んでいる。
多分、俺が何か言い返してくるかもしれないと睨んで。
「要するに、俺の口から“黒い噂”を肯定されたくなかったんだろ?」
「…………まぁ、そういう事になりますかねぇ」
「素直じゃねぇな、お前」
「よく言われます」
「褒めてねぇっての」
「ちょっ……やだっ!」
いつの間にか、俺は畳の上から彼女のもとに移動していた。
そして、恥かしそうに俯く彼女の頭をワシャワシャと撫でていると。
「おっ、邪魔したかなぁ~?」
事務所の入り口にはトレイを手にした志垣という男が立っていた。