モテKingのターゲット
「もしかして、自宅もこのビル?」
「………はい。2階と3階はホステスさん達の寮で、4階が自宅です」
「なるほどな。どうりで慣れてるわけか」
結構危なそうな店が多いのに、平然と歩く姿に正直肝を冷やした。
だって、腕尽くで引き込まれてもおかしくなさそうなのに、あっけらかんとした表情で呼び込みの連中に挨拶してたし。
もしかしたら、この店のママの娘って知られているのかもしれない。
というより、そうだろうな。
見た目は若そうだけど、人付き合いはしっかりしてそうな親に見えたし。
意外とこの繁華街での生活も不自由無いのかもしれない。
俺が考えを巡らせながら食べていると、
「黒い噂の全部は知りませんが、援助交際なんてしてませんし、パトロンもいませんよ。それに、誰とでも寝る女じゃありませんから」
いきなりストレートの直球が飛んで来た。
「別に、俺は噂なんて信じてねぇし」
「でも、顔に書いてありますよ?私の生活はどんな感じなんだ?って」
「っ……」
見事に言い当てられて、返す言葉が無くなった。
俺は視線を手元に落とし、黙々と箸を運ぶ。