モテKingのターゲット
デザートのフルーツ盛り合わせまでしっかりと頂き、漸く満たされたお腹。
俺の量よりかなり少な目だったのに、彼女はご飯を食べ残した。
「お前しっかり食わねぇと、パン職人になれねぇぞ?」
「えっ?」
「見た目より、かなり厳しい世界だから」
「そうなんですか?」
「あぁ、この通り」
俺は半袖のTシャツを捲り、上腕に力を込める。
すると、見事に盛り上がった筋肉に彼女の視線が釘付けになった。
「パン生地は、身体全体を遣って捏ねるけど、特に腕の力が相当いる。だから、食事はしっかり摂らねぇと、生地が上手く纏まらない。お前の体力じゃ、1日ともたねぇだろうな」
俺の言葉に呆然とする蘭。
恐らく、軽くショックを受けているに違いない。
だけど、真実は曲げられない。
俺は壁に凭れるように身体を楽にさせると。
急に何を思い立ったのか、残りのご飯を必死に食べ始めた。
「おいっ、気持ち悪くなっても知らねぇぞ」
「だっ、……大丈夫ですっ」
リスみたいに頬を膨らませ、口の中に押し込んでる。
「フッ、お前って単純なんだな」