いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。


私は体の力が抜けたかのように、心がスゥーっと軽くなっていくのを感じた。


……だけど、ホッとしたのもつかの間、お医者さんはとんでもない事実を私たち親子に言い放った。


「しかし、松岡さんは何らかの記憶障害である可能性があります」

「え……?」

「松岡さんの症状の中に、お姉さんが誰だか分からなくなった、という症状がありましたよね?……そのように“人の顔や名前が分からなくなる”ということは、何らかの記憶障害である可能性が高いんです」


目の前がチカチカ揺れて、真っ暗闇に包まれるような感覚に陥った。


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