いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。
ここがどこだか分からない恐怖なのか、もう手の届かない春斗への想いなのか。
どっちなのか自分でもよく分からない涙が、私の頬を虚しく伝った。
───その時だった。
「………さき………み……さき……」
どこか遠くから、大好きな春斗の声が私の耳に届く。
とうとう私、幻聴まで……?
「……心咲っ」
春斗の姿が、私の視界の片隅に入った。
あまりにも都合のいいことが本当に起きて、私は一瞬夢を見ているのかと思った。
………でも。
「心咲!大丈夫か!?」
涙を流し、しゃがみ込んでいる私の体をきつく抱きしめてくれたのは、他の誰でもなく春斗で。
こんな状況なのに、背中に回された腕にドキドキしている自分がいる。
「……春斗……っ」
「心咲、俺だよ。分かるか?」
私は春斗の言葉に、一回だけ頷いた。