いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。
午後5時ぴったりに、私は石井の駄菓子屋に行く。
駄菓子屋の前の古びたイスに、黒い短髪の少年が腰掛けているのが目に入った。
「……春斗」
私が名前を呼ぶと、その少年はゆっくりこっちに振り向いて、伏せていた顔を上げる。
「心咲」
優しく呼ばれた名前が、なぜだか私の心を寂しくさせた。
「ちょっと、歩こっか」
「……ん」
「近くに公園があるから、そこで話そう」
春斗は私の言葉に静かに頷くと、重い腰をようやく上げた。