いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。
もうこれ以上、嘘をつき続けることはできない。
私は、自分の中で覚悟を決めた。
「心咲って、なにかの病気なの……?」
唇をぎゅっと噛み締め、私はその言葉にそっと頷く。
春斗の顔が、一瞬だけつらそうに歪んだ。
「私ね、記憶障害なんだ。原因も分からないから、治す術もない。あともう少しで、生まれた時からの記憶が全部消えちゃうの」
私は自分の中の悲しみや不安、その全てを覆い隠すように、自嘲気味に笑った。
「中学の時には彼氏もいてね。病気が発覚する卒業式の前までは上手くいってたんだけどさ。病気が分かった途端に、フラれちゃった」
ねぇ、春斗。
今の春斗の瞳には、私はどんな風に映ってるのかな。