いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。
春斗の小さな心遣いが、胸の奥まで痛いほど伝わってくる。
「反対、されなかった……?春斗のこと、悪く言われなかった……?」
「俺の親も仁奈も、泣いてたよ。でも、心咲のことも俺のことも、悪く言わなかった。それどころか、“おめでとう”って笑顔で祝福してくれたよ」
「嘘……」
「本当だよ。それにさ、もし反対されたとしても、俺は心咲から離れるつもりはなかったし。言ったでしょ?俺は、心咲だから好きなんだって」
春斗は親指の腹で、私の頬に伝う涙を拭う。
そしてもう一度、私を強く抱きしめた。
春斗はさっき、私をバカだと言ったけど。
バカは、春斗の方だよ。
………優しすぎだ、バカ春斗。
そんな冗談めいた悪口を心の中で呟きながら、私は春斗の胸で泣いた。