いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。


「ああ、仁奈ちゃんも心咲ちゃんに会いにきたのか?どうぞ、いらっしゃい!」


って、春斗のお父さんが微笑んだ。


「じゃあ、父さん、母さん。仁奈もきたことだし、俺たち3人は俺の部屋に上がってもいいかな?」

「あら、もう上に上がっちゃうの?」

「だって心咲、さっきからずっと立ちっぱなしだしさ。体のこともあるし」


春斗がそう言うと、


「そうね、春斗の言う通りだわ。……心咲ちゃん、仁奈ちゃん。ゆっくりしていってね」


って言い残して、春斗のお父さんとお母さんはリビングの方に消えていった。


「それじゃあ、俺たちも2階に上がろうか。仁奈も早く靴脱いできなよ。それから、心咲はこっちね」

「ひゃ……っ」


春斗は仁奈さんの前だというのに私の腰に片腕をまわすと、私の歩幅に合わせて階段を上がり始める。


その間に後ろから感じる仁奈さんの視線が、ひしひしと痛かった。


< 127 / 271 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop