いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。


だからそんな春斗が、弱虫でよく女の子と間違えられてただなんて、想像すらできない。


「だから、俺はよくイジメられてた。………でもね、ある日そんな俺を助けて、かばってくれた人がいたんだ。それが、仁奈と蒼」

「そう、なんだ………」

「ふたりは俺を“男の子”として見てくれた。特に正義感の強い仁奈は、いつも俺をイジメているやつらに言ってくれたんだ。“はーくんは強いよ。だって男の子だもん”って」


どこか遠くを見つめて、そう話す春斗。


私の知らない春斗を知っている仁奈ちゃんが、すごく、羨ましく感じた。


「だからなんだろうね。気付けば仁奈は俺の中で、他の女の子とは違う、特別な女の子になってて。まだ誰かを好きになったことのなかった俺は、きっとこれが恋なんだって、そう思ってた」


胸が、チクリと鈍く痛む。


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