いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。
「心咲ちゃん、私はもう大丈夫だよ。思い出してくれて、ありがとね」
目に浮かんだ涙を堪えながら、優しく笑ってくれた仁奈ちゃん。
……本当にごめんね。
私と友達になったせいで、こんなにつらい思いをさせて。
“誰かに自分のことを忘れられる”
これがどんなに残酷なことか、ちゃんと分かってたのに。
私は、本当に病気なんだね。
こんなに些細なことで記憶を失って、最後には何を言われても分からなくなって、思い出せなくなって。
自分のことを、みんなのことを、今までのことを。
きれいさっぱり、忘れちゃうんだろうね……。
もう、すぐそばまで迫ってきているその日を想像すればするほど、得体の知れない恐怖で体が震えた───。