いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。


「君になら、心咲を預けられる。僕たちふたりはそう思ったから、今日の旅行を許したんだよ。だから今さら“ありがとう”だなんて、いいんだよ」


そう言って、もう一度頬を緩めて笑ったお父さん。


お母さんもその光景に涙を浮かべながら微笑んでいた。


……なんだろう、この気持ち。


胸の奥があったかくて、すごくポカポカする。


ああ、そっか。


きっとこんな気持ちのことを、幸せっていうんだろうな。


今までたくさんの幸せを感じてきたけど、今日感じたのは今までとは違った幸せ。


恥ずかしくて、でも嬉しくて。


なんだか泣きたくなるような、そんな幸せ。


新たな幸せに出会えたと実感したとき、私の心がトクンと小さく音をたてて鳴った。


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