いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。
ふわふわと意識が揺れる中で、誰かが私の名前を呼んだ。
──さき、心咲……。
どこかで聞いたことがあるはずの声なのに、その人の顔と名前が出てこない。
何か大切なものが自分の中で消えていくような感覚に陥って、重いまぶたをゆっくりと開けば、瞳に映ったのは自分の部屋の天井で。
「う、わぁ……」
あの不思議な夢のせいなのか、私は全身に大量の寝汗をかいていた。
七分丈の薄手のパジャマもしっとりと湿っていて、すごく着心地が悪い。
今日は日曜日だからめざまし時計に起こされることもなく眠れたな、なんて思いながら時計に目をやると、針は8時50分を示していた。