いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。
それどころか、もっと必死な顔をして私に言う。
「あなた……っ、教えてくれたじゃない……。春斗くんは、すごく優しくていい人だって。こんなに素敵な人、この世にはいない、って……」
「え……」
「お母さんに、笑いながら言ってくれたじゃない……。春斗は、私のヒーローなんだって。学校で出会った、たったひとりのかけがえのない人なんだって……っ」
「…………」
叫ぶように言葉を放ったお母さんの瞳から、涙がポロリと一滴こぼれる。
私の頭は、まるで消しゴムで記憶を消されたように真っ白だった。
お母さんの手が力を失ったように、スルスルと私の手から滑り落ちていく。