いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。


優しい日差しが、この世界を明るく照らす。


……ううん、違う。


この世界じゃなく、“私”を照らしてくれている。


気のせいかもしれないけど、今日だけはそう思ってもいいよね?


「心咲、忘れ物はない?お母さん、行けなくてごめんね……。今日は心咲の高校の入学式なのに」


玄関までお見送りにきてくれたお母さんが、私を見て申し訳なさそうに眉を下げる。


そんなの、気にしなくていいのにね。


「大丈夫だよ」


私がそう言って笑えば、お母さんも少しだけ笑ってくれて。


私はお母さんに


「行ってきます」


とだけ言って、自分の家をあとにした。


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