いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。


春斗は電話の向こうでふっと笑って、


『外、出てみなよ。今日は星がすごくきれいだから』


って私に言う。


「星?」

『うん、そう。星だよ』

「えー。本当に?」


なんて冗談っぽく言いながらも、その場に立ち上がって窓際に向かい、窓をカラカラっと開ける。


少しだけ肌寒い風が、部屋の中にふわっと入り込んできた。


もう10月だからね。


いくら昼間が暑くたって、夜はやっぱりもう寒いなぁ。


そう思って“はぁ”っと息を吐くと、


『もう窓開けた?』


って言う春斗。


「うん、開けたよ」

『じゃあ、空見てみなよ』

「ん、分かった」


そう言いながら、私はそっと夜空を見上げる。


「……っ、うわぁ……」

『星、きれいでしょ?』

「……うん、すごくきれいだね」


私の目に飛び込んできたのは、現実のものとは思えないほど満天の星空。


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