いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。
俺たちふたりの視線の先には、耳の真上で結ばれたツインテールをくるくる揺らしながらたんぽぽを摘む小さな女の子。
俺たち夫婦、ふたりの……愛娘。
「心春(こはる)」
俺が名前を呼べば、心春はくるっとこっちを向いて、
「ぱぱぁー、ままぁー!」
ってにまっと笑い、こっちに向かってダッダッと走ってくる。
「もう、心春ってば。そんなに走ったら転けちゃうでしょ?」
「だってー……。早く、ままにぎゅーってしてほしかったの!」
笑顔でそういう心春を見て、心咲も嬉しそうに笑う。
「じゃあ、ママがぎゅーってしてあげる!ほら、心春。おいで?」
そう言って手を心春に向かって広げた心咲。
でも、心春は心咲の腕に飛び込むことなく、心咲の右手に握られていたノートを指差した。