いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。


きっとこの子は、何か闇を抱えてる。


誰にも言えないようなことを、ひとりで背負ってる。


きみのことを考えれば考えるほど、不器用なその態度がいじらしくなって。


俺はとうとう、心咲に告白まがいなことをした。


……だけど、俺はフラれた。


大好きな彼女に、


“他に好きな人がいる”

“その人と付き合うことになったから、もう会えない”


と、言われて。


そのときの俺は、自分で言うのもあれだけど、よっぽど酷い顔をしていたと思う。


でもそれからしばらくして、心咲が俺を避ける本当の理由が分かって。


心咲から全てを聞いたとき、俺は心に固く誓った。


心咲を、もう二度と離さないと。


心咲を泣かせて苦しめた元カレのことなんて忘れるくらい、何倍も何倍も、心咲を愛そうって。


ふたりの想いが重なったその日から数ヵ月後、心咲は全ての記憶を失った。


自分のことも、両親のことも、仁奈や蒼、俺のことも。


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