いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。


だけど、俺だってみんなと同じ人間だ。


心咲が記憶をなくしてからしばらくは、喪失感にさいなまれ、心にポッカリ穴が空いたみたいでとてもつらかった。


心咲に会いに行くたびに向けられる笑顔は、どこか遠慮がちでよそよそしくて、それが寂しかった。


“春斗”


真っ赤な顔で照れながらそう呼んでくれるきみはもうここにはいなくて、いるのは、


“荒嶋くん”


って、俺のことを名字で呼ぶ君。


そのたびに、胸の辺りがきゅっと締め付けられるように切なくなった。


でも、そんなときは、そっと瞳を閉じるんだ。


そうすれば、あの日きみと見た星空が、いつでも鮮明に頭の中によみがえるから……。


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