いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。
それから何ヵ月か月日が過ぎて、俺は高校2年生の夏を迎えた。
いつものように心咲の家に行くと、おばさんが温かい笑顔で俺を迎えてくれる。
すぐに心咲も2階から降りてきて、にこっと控えめに笑ってくれた。
心咲の部屋に行き、1時間ほど他愛のない話をしたあと、俺は“もう帰るね”と心咲に言ってから部屋を後にする。
心咲も玄関まで見送ってくれた。
ここまでは、いつもと同じだった。
……でも。
『春斗くん……っ!』
俺が心咲の家を出発してから、おそらく3、4分。
聞こえてきた声に振り向くと、一冊のノートを手にしたおばさんが俺のあとを追うようにして走っていた。