いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。
『……っ、はぁ、よかった……』
『……どうかしたんですか?』
結構全速力で走ったみたいで、息さえままならない様子のおばさん。
俺はそんなおばさんの肩に手を当てながら、そう問う。
『……これ、心咲が残した日記なの』
『日記……?』
『ええ』
俺の手に渡ったのは、一冊のシンプルなノート。
『心咲が記憶をなくす前まで書いていたものみたいなの。私も偶然それを見つけたんだけどね……。春斗くんにもよかったら見てほしくて』
おばさんのその言葉を聞いた俺は、動揺しながらもノートの表紙をスッとめくった。
始まりの日付は、3月10日。
内容は、病気が分かったときのものだった。
『心咲……』
俺は生唾を飲み込みながら、ページを一枚一枚めくる。