いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。


日記は毎日じゃなくて、なにか特別なことがあるたびにつけられているみたいだった。


中には俺とさよならをした日のことや、俺と付き合い始めた日のこと、俺と旅行にいった日のことも書かれていた。


『あの子……春斗くんのことが、本当に大好きだったのね……』


どこか遠い目をしてぽつりと呟くおばさんを横目に、俺は最後のページを開く。


彼女がこの日記の終わりを書いたのは、10月10日。


彼女の記憶が消える、15日前だった。


『……っ』


心咲の残した文章を最後まで読み終わる前に、俺は自分の髪の毛をくしゃっと掴み、グッと目をきつくつむった。


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