いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。


「あ、本当だ」


荒嶋くんは、自分の腕にかけられている私のスクールバックを見るなり、今度は目を細めて笑い始めた。


「ははっ、松岡さん。ごめん。俺、松岡さんのスクバ持ってるの忘れてた。本当にごめん」


私に向かって、“ごめん”と両手を合わせる荒嶋くん。


………え、嘘でしょ?


おふざけじゃなくて、本当に忘れてたの?


そう思って面白おかしくなったのと同時に、私の胸がまた、甘くトクンと音をたてた。


それはきっと、彼があまりにも可愛く笑ったからだ。


このきれいな顔からは想像できないくらいに、荒嶋くんの笑顔は女の子みたいに可愛かった。


……って、こんなこと男の子に言ったら、怒られるよね。


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