いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。
そして私をかばうように、その声の主が私の目の前に立ちはだかる。
さっぱりと整えられた黒い髪の毛に、少し日に焼けた筋肉質な腕。
「松岡さん、もう大丈夫だよ」
振り返ったのは、私を安心させるような、あの優しい笑顔。
大げさかもしれないけど、私にはそんな彼がヒーローに見えた。
「荒嶋、くん……」
私が弱々しく名前を呼ぶと、彼は“ん”と一回だけ頷いて、また前を向いた。
そして三田さんたちに向かって言う。
「今、松岡さんに何してた?」
「え……」
「言えない?早く教えてよ。今、松岡さんに何してたって聞いてんだよ!」
荒嶋くんはこれを荒げて、そう怒鳴った。