いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。


胸がすごく苦しくて、涙が出そうだった。


「ねぇ、春斗……」

「なに?」

「仁奈さんってさ……」


私はそこまで言ってから、口をつぐんだ。


“仁奈さんってさ、春斗の彼女なの?”


聞きたいのに、聞けない。


「い、たっ……」


そしたら急に右頬に鈍い痛みが走って、びっくして顔を上げると、春斗がなんだか楽しそうに笑って私の頬をつまんでいた。


「心咲、なにか勘違いしてない?」

「え?」

「仁奈は、俺の幼なじみだよ?」

「………へ?」


春斗はもっと目を細めて笑う。


………幼なじみ?


春斗と仁奈さんが?


< 69 / 271 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop