いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。


不安になってお母さんの方を向けば、お母さんは優しく笑って私に言った。


「検査、してみましょうよ。何もなかったら、それはそれでいいじゃない」


私はその言葉に、そっと頷く。


「では、松岡さん。こちらにお願いします」


やわらかい笑顔で私を丁寧に案内してくれる看護師さんについて行きながら、私は心の中で思った。


………大丈夫だよね?


脳の中に、腫瘍なんか見つかったりしないよね?


まだまだやりたいこともたくさんあるし、これから素敵な日々だって待ってる。


私は、これからも今まで通り、普通に生きていけるよね?


そう思ったって、意味のないことはちゃんと分かってる。


でも、このどうしようもないくらいの不安を少しでも緩和するには、こうやって自分に“大丈夫”って言い聞かせるしかなかったんだ。


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