いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。


「えー、では検査の結果ですが……」


あれから3時間が経過し、時刻は12時過ぎ。


いろんな検査室を転々とされた私の体は、もうぐったり。


でも、いくら時間が経っても心だけは落ち着いてくれることはなかった。


お医者さんはホワイトボードに今日撮った脳の写真を貼り付けると、私とお母さんの方に向き直る。


私の横にいるお母さんの体が、緊張なのか不安なのか、強ばっているのがよく分かった。


「我々が心配していたような、脳全体の萎縮、そして記憶を司る海馬という部分の萎縮も今回の検査では見られませんでした」


お医者さんは、私の目とお母さんの目を交互に見ながらそう告げる。


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