風旅記
第二話


クラクラする頭を抑えて、目の前に寝ている少年の氷枕を替えてやる。
あれから半日過ぎた頃、目を覚ました。
急に殴られ、頭を打ったらしく、眩暈がする状態の中、隣にいる少年の介抱をする。
んっ… と言って薄っすら目を開けた少年を見て、安堵の笑みをこぼす。
コイツは過去にも何度か変な事を言ったり
暴力を奮って倒れている。
が、こんなに強く殴られたのは初めてだ。

 猫さん…

 起きたかよ、クソガキ

 いつの間に寝ましたっけ…

覚えていないらしい。いつもこうだ。

 朝からずっと起きてなかった。
 …疲れてるんじゃないのか?

 そうかな…ん、そうかも

 もうちょっと休んでろよ

少年はこちらを見るなり血相を変えた。
さあっと、青ざめていった。

 猫さ…頭、血が…

 大したことねえ

 そんな!フラフラだし、かなりの量だし

しっとりと黒毛を濡らしていたそれは、
床にも滴り落ちていた。
あぁ、何だか霞んで見えるなぁ、あいつの顔。いつも消えそうだか、今日は一層…

 猫さん、手当するので横になって

 いらん。休んでろよ

 でも、ヤバイですよそれ

 …余計だ、やめろ。触るな

 じっとして

 あっ!やめっ…いっ!

 ほら!痛いんでしょ? 

手当の間、ずっとはぁはぁ言っていた。
痛くて痛くて敵わない。

 やだ!いったぁ…

 大人しくしてないから尚更痛いんですよ
 ほぉら、痛くなーい痛くなーい

 痛い!

叫んだ瞬間、くらっとして倒れてしまった
起き上がることが出来ない。

 猫さん、猫さん!?聴こえますか!

 あぁ…

間の抜けた返事しか出来ない。
そのまま意識を手放した。
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