風旅記


小さな少年がいる。
私の方をみて、 姉さん! と手を降っている。手を降りかえす事はない。
上等な衣服の少年と、裾の擦り切れた質素なドレスを着た私とでは、一緒に居ることができなかった。

腹違いの兄弟なのだが、知っていて
姉さん とよんでくれているのだろうか。
少年の父が、ふらっと浮気した相手。
それが私の母だった。
母はそろそろ死を迎える。
私はこれからどうしたら良いのだろう?

頭の良かった私に、せめてもの償いなのか、父は少年の先生として私を住み込みで雇った。着るものも、何もかも与えてもらった。少年は嬉しそうだった。

 やっと、一緒に居られるね。姉さん

分かって居たのだろう。もしかしたら少年が図ったのかもしれなかった。
しかし、少年の母は良く思わない。
何回も殺されかけた。
その何回目か、不運にも屋敷全てを焼いてしまった。私は助けようとした猫と一緒に焼かれ、少年は記憶がとんでしまった。
気がつくと私は猫となり少年の隣にいた。
そして、宛のない旅がはじまる。

そんな夢を見た。
長々と何だったんだと思った。
気がついたら、涙が溢れていた。
止まらなくて、声をあげてないた。

 どうしたの!?猫さん!

 なんでもねえよ、なんでもねえよ!

そっと、少年の腕に抱かれる。

 大丈夫、僕が守る

いつの日か聞いた言葉。

 お母様が怖い?
 大丈夫、僕が守る

 だから、

 安心して

二つの声が重なって聴こえる。
そっと笑みをこぼした。

 大丈夫、怖くなんかない
 君が居てくれるなら
< 6 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop