やがてAIを知る
『楓』
また呼ばれた…彼はどうしたいのか…
訳もわからずとりあえず会話しようと試みる。
「あ、の…葵くん…は…」
『……っ!!』
何歳なんですか?なんて世間話を続けようとした私の言葉は彼のリアクションによって打ち消された。
目を大きく開いて少しの間止まっていた彼は、やがて嬉しいのか悲しいのか分からない表情で…目を潤ませながらこちらを見つめていた。その表情にははじめて会ったとは思えない深い感情が含まれていた…気がした。
「えっと…葵くん…?」
『…っ!あの…俺今日はこの辺で失礼します…』
急にそそくさとドアの方へ向かい、ドアの前で私にむかってぺこりと頭をさげると、勢いよくドアを閉めて消えてしまった。
なんなんだ…彼は…出会ったばかりの瞬間はひどく冷たい物言いだったのに…
…名前を呼んだだけであんなに動揺するなんて。
「変な人…」
自分にしか聞こえない声で呟いた言葉はまだ掠れていた。