月下美人が堕ちた朝
だけど、と、カズヤは言った。

「だけど、科学的にはどうしても証明できないことが世界中に溢れてる。
そしてそれが現実に俺を変えたんだ。
自分でも驚いているけど」

カズヤの言うことは正論だ。

この世界は、科学的に説明が出来ないようなことで溢れ、それで形成されているのだろう。

あたしは、スバルと出逢ったことで何か変われたのだろうか。

そしてあたしは、スバルの何かを変えることは出来たのだろうか。

あたしと出逢わなければ、スバルはホストのバイトをしなかった?

あたしと出逢わなければ、もっと幸せな恋愛ができた?

あたしはきっと、スバルじゃなきゃダメだった。

そうじゃなかったら、ここまで生きてこれなかった。

光を浴びて生きていくには、独りだけでは難しかったから。

スバルはあたしに教えてくれた。

形にはない大切なもの。
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