月下美人が堕ちた朝
奇跡的なほど、全ての職場で上司や客と喧嘩してクビにされた。

その理由は、本当に幼稚なことだった。

「ピアスを外せと言われた」

「髪を染めろと言われた」

「自分が作った料理が不味いと言われた」

どれも聞いて呆れてしまったけれど、スバルらしくて笑ってしまった。

だからあたしは、スバルの代わりにとにかく働いた。

時給をあげたい一心で、酒やフードの名前を一生懸命覚えたし、作り笑顔も上手になった。

そして初めての給料が、口座に振り込まれた日。

あたしはすぐに五万をおろして、このジッポとリングを買ってスバルに渡した。

喜んでいるような、驚いているような不思議な表情をしていたけれど、優しいキスをしてくれた。

すぐに左手の薬指にリングを填めて、新しいジッポで煙草を吸ってくれた。

嬉しかった。

頑張って良かった、と、そう思った。
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