月下美人が堕ちた朝

あたしは世界で一番冷酷な罪人だ。

自分で自分を罵って、最後の煙を昔みたいに星空へ吐き出す。

今、この世界に、こんなにも自分を憎んでいる人間は、あたし以外にいるのだろうか。

あちらの国では戦争をしているというのに、あたしの思想はいつだって馬鹿馬鹿しい。

吸い殻を携帯灰皿に押し込め、それをバッグに入れた変わりに携帯電話を取り出す。

スバルの遺体が今どこにあるのかを、フミカに聞く為だ。

着信履歴から番号を呼び起こし、電話をかけると、スリーコールで彼女は出た。

「アミ?
さっきはごめん…。
何か、アミの声聞いたら取り乱しちゃった」

鼻声で謝罪してくるフミカに、あたしも謝った。

現実から逃避したいが為に、あたしはフミカの電話を一方的に切ったのだから。

あたしがスバルの遺体が何処に安置されているのか聞くと、すでに家族が引き取った、と、言う。
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