月下美人が堕ちた朝
病院に運ばれたということは、すぐに分かった。
消毒液の臭いが充満する部屋。
足元の方に、若い看護師が包帯を綺麗に丸めていた。
あたしが小さな声で彼女に声をかけると、すぐに顔をあげて「気付きましたか?」と、言った。
大きな瞳が、印象的だった。
彼女はあたしのすぐ右側に来て、脈を計ったり点滴のスピードを調節したりした。
その隙に、彼女の左胸に張り付いている名札を盗み見る。
そこには、今よりも少しだけ初々しい表情の写真と「YURIE KAWAMURA」という名前。
凛とした真っ直ぐな眼差しに、ユリエという名前がピッタリだと思った。
彼女は作業を淡々とこなしながら言った。
「極度の睡眠不足とストレス、それと体がかなり衰弱してますね。
それに、調べなきゃならなそうなことが、一つあります」
自分とあまり歳が変わらないはずの彼女が大人に見える。