月下美人が堕ちた朝
それは決して制服のせいではなくて、あたしが学生だからではない。
人間の命と真剣に向き合っているからだろう。
彼女は後ろに立掛けてあったパイプ椅子を広げ、ベッドの横に座った。
不思議に思い、声を掛けると、良いの、と、彼女は言った。
「良いの、勤務時間は終ってるから。
貴女に話したいことが何点かあるから、話したら帰るわ」
突き放した喋り方をするのは、看護師と患者という枠を外さない為なのか、それとも普段からの癖なのかは分からない。
だけどあたしは、こんな女も嫌いじゃない、と、思った。
彼女は背中を丸めて、声を潜めて話し始めた。
「まず一つ目。
さっきご家族の方に連絡をしたら、明日の朝にお母様が迎えにいらっしゃるそうよ」
あたしは思わず息を飲み、言葉を失ってしまう。
あの母親が迎えに来るなんて、信じられなかった。