月下美人が堕ちた朝
それとも、看護師にまで良い母親を演じたのだろうか。
どう考えても、理由はそれしか思い付かなかった。
看護師は、息も吐かぬまま話し続ける。
「二つ目。
さっき警察が来たわ。
貴女に聞きたいことがある、って。
明日の夜に改めて、貴女の部屋に行くみたい」
明るく照らす蛍光灯に目を細めて、警察があたしに逢いたがっている理由を察した。
スバルのことだろう。
あたしはようやくここで、今自分が置かれている状況に気付く。
倒れて寝ている場合じゃない。
早く、逢いに行かなくちゃ。
無理に起きようとすると、目の前に渦巻きが現れて視界を邪魔する。
結局また後頭部の痛みに負け、あたしはベッドに体を沈ませる。
看護師は冷静な口調で、無理よ、と、言った。
「無理よ、起き上がるなんて。
倒れたときに強く頭を打ってるわ。
明日の午後まで安静にして」