月下美人が堕ちた朝
あたしは頭の痛みと、スバルに逢えない焦りからか、涙目になりながら看護師に懇願した。
恋人が殺されたから、行かなきゃならない場所がある、と。
彼女は腕組みをして、溜め息のように、そう…、と、言った。
「そう…。
悪い夢を見たのね。
さっきうなされてたから。
それより、三つ目の話をさせて。
もし明日彼氏に逢うなら、すぐに伝えて」
信じてもらえないのは分かってる。
あたしだって、信じられないんだから。
明日も明後日も、あの部屋でスバルと居る自分が想像できる。
だけど、カズヤもフミカも、あんな悪い冗談は吐かない。
泣いたりもしない。
あたしはとうとう一筋の涙を流した。
それを見た看護師は、真っ白な布団の上からあたしのお腹を摩って言った。
「ここに赤ちゃん、居るからね」