月下美人が堕ちた朝
20060726am01:42
別に脅かすつもりなんてなかったし、面白くもないジョークを言うつもりもなかった。
ただ、初対面の疲れきった親父にスバルを馬鹿にしたような言い方をされて、殺意が芽生えただけ。
スバルに触れたり話たり、怒ったり馬鹿にしたりできるのは、あたしだけだから。
あの後、言葉を失った運転手は素早く運転席に戻ってあたしをアパートの前で降ろした。
お釣りを渡す手が震えていて、情けない親父に失笑した。
馬鹿みたい、大人なんて。
自分の部屋へと続くアスファルトの階段を登りながら、走り去るタクシーのエンジン音をぼんやりと聞いていた。
足が重くて、思うように登れない。
やっとの思いでドアの前に辿り着き、鍵を開けた。
この空間が、暗闇で在る理由は分かっている。
スバルがいない部屋だから。
スバルが帰ってこないから。
昨日の朝と何も変わらない。