月下美人が堕ちた朝
あたしの部屋に来るまで、何があったのかは知らない。

だけどスバルは何かに対して酷く怒っていたような気がしたし、それは聞いてはいけないことだと察した。

あたしは黙って料理を続け、スバルも同じ体制のまま、ずっと黙っていた。

ここからの記憶が、あまりない。

思い出そうとすると、頭が痛む。

体が拒否反応を示しているのだろうか。

あたしは六本目の煙草に火をつけて、またラジオに耳を傾けた。

「サクラザワ公園で、男性の死体を発見しました。
警察の調べによると、男性は二十歳前後の…」

あたしは思わずハッとする。

サクラザワ公園は、あたしとスバルの思い出の場所だからだ。

大学生になったばかりの頃、友人のフミカとベンチで喋っていた。

「合コンを開こう」とか「恋人が欲しい」とか、そんな色気付いた話ばかりをしていた。

そのとき、たまたま通りかかった男の子がいた。

高校の制服をだらしなく着て、髪の毛も金髪だった。
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