月下美人が堕ちた朝
あたしは適当な相槌を繰り返した。

「スバルの履歴書に書いてあった緊急連絡先が貴女の番号だったので。
それに、貴女にも聞きたいことがあるんですよ」

あたしは聞き返した。

聞きたいことがあるのは、あたしの方なのに。

タドコロはあたしの言葉が聞こえなかったのか、話をどんどん進めていく。

「貴女、先日、スバルの常連客に逢いに行ったそうですね。
彼女の職場で怒鳴り散らして、殴ったと聞いてますが…本当ですか?
一昨日スバルに聞いたんですが、何も言わないんですよ。
そして今…うちのクラブで、スバルはあの女に殺されたんだと、常連客が泣きながら叫んでます」

何年も前の記憶みたいに、あたしの脳細胞は一昨日の出来事を少しずつ蘇らせる。

タドコロが言っていることは、事実だ。

スバルの携帯電話に何度も「愛してる」の言葉を送信して、スバルの「愛してるよ」の言葉を受信し続けた女。
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