月下美人が堕ちた朝

あの女のことを調べるのは簡単だった。

携帯電話のメモリーには、マナミ、とだけ入っていたけれど、スバルの名刺入れからマナミという名前が書かれているものは一枚しか見付からなかったから。

ご丁寧に書かれた一部上場の企業の住所と、名前の上に書かれた秘書課の文字。

あたしは寝てるスバルを放置して、マナミが働いているであろう昼間の時間帯にタクシーで彼女が勤める会社へ向かった。

そこは学生のあたしなんかが入るには、あまりにも場違いだったような気がする。

だけどあたしはフロントにいたモデルのように綺麗な女性に、マナミを呼ぶように強く言った。

「お約束がないと…」と、何度も言われたが、あたしは諦めなかった。

仕方なく連絡を取ってくれた数分後、長い髪を一つにまとめたスレンダーな女性があたしの前に現れた。

「お待たせ致しました。
何かご用でしょうか?」
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