月下美人が堕ちた朝
あたしを見下したような切長な目を見た瞬間、自分の中で何かが壊れていくのが分かった。
あたしはマナミの右頬を思いきり殴った。
広いロビーにその音が響いて、一瞬時間が止まったような気がした。
そしてあたしは彼女を罵倒した。
警備員に腕を掴まれ、追い出されそうになる。
それでもあたしは止めなかった。
「そんな綺麗なスーツ着てるくせに、心は汚れてる」
「稼いだ金で男を買うなんて可哀想な女」
「返せ返せ返せ返せ…!」
「スバルを返せ」
あたしは結局警備員に追い出され、熱いアスファルトの上に投げ出された。
自動ドアが閉まる直前、マナミがまたあの目であたしを見ながら言った。
「可哀想なのは、私じゃなくて貴女じゃないの?」