月下美人が堕ちた朝
20060726am02:59

トラウマなんて、思い起こせば沢山ある。

だけどそんなの、生きにくい世の中で生活している人間なら、誰でも抱えてるはずだと思ってた。

きっとみんな何かは抱えている。

「境界性人格障害」

そんなカテゴリの中に入ってしまったのは、あたしが弱い人間だから。

許容範囲が狭いから。

だからきっと誰も悪くない。

悪いのは、いつだって自分だ。

教科書を閉じて、バッグの中を整理する。

楽譜を取り出すと、底から汚れたタオルが丸くなって出てきた。

記憶がない。

それを広げたとき、あたしは思わず短い悲鳴をあげた。

真っ白なタオルには、血のような赤い染みが何箇所かについていたのだ。

動悸が早くなり、頭が痛む。

過呼吸に襲われそうになり、何度も咳き込んだ。

倒れるわけにはいかない。

あたしはタオルをゴミ箱に投げ、メモ用紙をバッグに入れて急いで部屋を出た。
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